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線引小切手の場合,支払人は銀行または自己の取引先にしかその支払をすることができないし(小38条1項・2項),また銀行が線引小切手を取得(取立委任についても同様)する場合にも同様の制限がある(小38条3項)。 したがって,事故が起きても,不正所持者が容易に支払を受ける(または譲渡する)のを予防できるとともに,不正受領者を知ることができ,被害者救済の可能性が一般の小切手よりも大きくなる。
小切手の表面に2本の平行線が引かれたものを「線引小切手」または「横線小切手」という(小37条2項前段)。線引の記載をすることができるのは,振出人または所持人である(小37条1項)。 線引には,一般線引と特定線引の2種類がある。
2本の平行線に何の記載もないか,あるいは「銀行」またはこれと同一の意義を有する文字(たとえば銀行渡しとかBankとか)などと記載したものを「一般線引小切手」(小37条3項前段),これに対して,2本の平行線に特定の銀行名(たとえば「甲銀行」)を記載したものを「特定線引小切手」という(同項後段)。 一般線引小切手にあっては,支払人は銀行かまたは自己の取引先に対してだけ支払うことができ(小38条1項),すべての銀行は自行の取引先または他の銀行だけから小切手の取得ないし取立委任を受けることができる(同条3項)。
この場合「取引先」が問題となる(後述)。 特定線引小切手にあっては,支払人は平行線内に記載された銀行(被指定銀行)に対してだけ支払をすることができ,また被指定銀行が支払人である場合には,自行の取引先に対してのみ支払をすることができる(同条2項本文)。
取引先とは,支払銀行と継続的な取引関係にある者,すなわち銀行取引を通じてその者の素性がよくわかっている者を意味する。 継続的な取引関係とは,たとえば従来から預金関係があり手形割引や手形貸付などを受けている場合などが当たる。

結局,当座取引のある者が取引先の典型である。 他方,線引小切手を預け入れて支払銀行に預金口座を開設することはできないし,その小切手の呈示直前に預金取引を始めた者などは取引先に含まれない。
一般線引を特定線引に変更することはできるが,特定線引を効力の弱い一般線引(または普通の小切手)に変更することは許されない(小37条4項)。 効力の弱いものへの変更を認めると,悪用されるおそれがあるからである。
線引それ自体または被指定銀行名を抹消することは禁止されており,振出人がそれを抹消しても抹消がないものとみなされている(同条5項)。 特定線引がある場合に重ねて複数の特定線引をすることはできない。
特定線引が同一小切手に数個記載されているときは,支払人は支払ってはならない(小38条4項)。 ただし,2個の特定線引がなされているが,そのうちの1つが,手形交換所に取立委任(代理交換)のためになされたものであるときは,支払人は取立を委任された銀行に支払うことができる(同項但書)。
支払人または銀行が,線引小切手に関する制限に違反(線引制度違反)して小切手を支払いまたは受け入れたとしても,その支払や取得が無効となるわけではない。 しかし,その結果,正当な小切手の所持人に損害が生じたときは,これらの制限を遵守しなかった銀行(支払銀行を含む)は,小切手金額を限度として賠償の責任を負わなければならない(小38条5項)。
小切手には支払拒絶による遡求が認められるだけで,引受拒絶による遡求は問題にならない。 支払拒絶による遡求については,手形の場合とだいたい同じである(小39条〜47条.70条)。
支払拒絶の証明方法としては,拒絶証書のほか,支払人の拒絶宣言または手形交換所の宣言でもよい(小39条2号・3号)。 所持人の遡求義務者(振出人・裏書人)に対する遡求権は,呈示期間経過後6ヵ月(小51条1項)で時効にかかる。
支払保証をした支払人に対する権利は1年である(小58条)。 再遡求権の時効は,手形と同様6カ月である(小51条2項)。

時効の中断については手形と同様である(小52条.73条)。 小切手では,引受が禁止されている(小4条)ので,支払の確実性を高めるために支払保証という制度が認められている(小53条〜58条)。
支払保証は,支払人(支払銀行)が小切手の表面に「支払保証」と記載し,日付を付して署名するものである(小53条)。 支払保証人は,支払呈示期間内に小切手が呈示された場合にのみ支払義務を負い(小55条1項),支払拒絶の場合は,拒絶証書または支払拒絶宣言などによってそれを証明するときにのみ,遡求金額に準じた金額を償還する義務を負う(小55条2項・3項)。
しかし,銀行は,支払保証の請求があったときには,自己宛小切手(預手)を交付することにしており,実際には支払保証は利用されていない。 銀行が負う小切手上の義務内容はほぼ同じだが(小55条.29条.39条.44条.45条),支払保証では銀行は支払資金を振出人の当座預金から完全に引き落とせないのに対し,預手の場合,支払資金は預手を売り渡した対価として当座預金から引き落とし別段預金に組み入れ,これを資金として振り出すことができる。
本章では,株式や社債などの証券の発行や取引に適用される証券取引法を中心に,証券取弓|に関する法規制を概説する。 証券取引法による規制は,大きく3つに分けることができる。
@企業内容の開示(ディスクロージャー)規制,Aインサイダー取引や相場操縦などの不公正取引の禁止,G証券会社や証券取引所などの業者規制である。 本章では,@とAを中心に解説を行う。
最近では,証券取引が国際的に行われることも多くなったため,国際的な証券発行と諸外国の証券関係規制についても,簡単ではあるが解説する。 なお,今回は,「等」と「など」を区別して使用した。
「等」は法令で使用されている用語で,それが具体的に何を意味しているかは,法令により定義されていることがほとんどである。 これに対して,「など」は筆者が記載を省略するために独自に使用したものである。
証券業者,銀行,投資家などから構成され,株式や社債などの売買,投資,起債など,証券取引が集団的・競争的に行われる場を証券市場という。 証券市場は,すでに発行された証券が売買される場である流通市場と,企業や国などが新規に証券を発行して,投資者から直接に資金を調達する場である発行市場とに大別できる。
流通市場の例としては,取引所市場と店頭市場がある。 取引所市場は,東京証券取引所など,証券取引所が設けている市場であり,そこでは多数の売買注文が集中し,競争売買が行われている。

取引所市場での取引の対象とされている株式が上場銘柄(上場株式)である。 ソニー株,トヨタ自動車株など,大企業の株式が多い。
新たにある会社の株式が証券取引所の市場での取引の対象とされることを証券取引所への上場という。 上場により株式の売買が活発に行われるようになり,株式の流通性が高まる。
その結果,株式を上場している会社は,株式を大量に発行して多額の資金調達を行うことができるようになる。 また,上場により会社の社会的信用が高まり,他の企業との取引や,求人活動などで有利になることもある。


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